とうふ、おいしいね。

世間の荒波でサーフィンできるようになりたい。

昨年の今頃

わたしと娘は二人で金沢に居た。
夫は別の治療と義両親から地元に戻ってくるようにと言われて帰ってしまったため、取り残された形になる。
実家からは帰ってこいと言われてるし実家に帰ってしまおうかな、でも夫からは一緒に暮らしたいと言われているしな、義両親にはこれ以上迷惑かけられないしな。
色々とうじうじ悩んでいた。

昨年のいまごろ、金沢は梅が散り始め間もなく桜が咲こうとしていた。
梅の時期は満開の梅の間を通っていい匂いだねーと言いながら保育園に通っていた。

そろそろ桜の時期かしらと思い、兼六園に行ってみようと思った。
ちょうど県民デーで無料開放されていた日があった。当時兼六園からわりと近いところに住んでいたので、娘と私、新しい靴を買い、歩いてお花見に出かけた。

いつもは公園の中だけを歩いてきていたがお城の跡にも足を伸ばしてみようとウキウキしていた。
時刻は夕方。
少し寒いけど、夜桜もまたいいだろうと思っていた。
この世のものとは思えない美しい景色が広がっていた。
何もかも美しかった。
それと同時に、なんで子供と二人きりなんだろうと寂しくなった。
寂しくて、身の置き場がなくて、きれいだねーと言いながら泣いた。
子供はそれを見て、「ママ、お酒でも飲む?」と言ってきた。
「バカヤロー、きれいなもの見て感動して泣いてるんだよ!」と言って誤魔化した。

兼六園内にいっぱいの桜。
それを照らし出す灯篭。
それが水を張ったお堀に映って夜がもうすぐ来そうな空の青と相まって、絵葉書で見たような景色だなあ。不思議だな。とぼんやり考えていた。
歩いておなかが空いたので娘と遅いご飯をと、屋台の焼きそばを買って二人で食べた。
なんだかものすごく美味しかった。

結局食い気かよ!っていう話ですが、
あの風景と気持ちは忘れられない。
いつしかまた必ず行きたい。
まだモヤモヤした気持ちが取れないけれど、この気持ちが晴れたら行こうと思う。

奇跡が起きて夫の病気が治って、また三人で…とは思っていない。
奇跡は起きたら良いと思う。せめて健康で話すことが出来て歩くことが出来て、笑っていて欲しいと心から願っている。ついでに私が出来なかった分、他の人と結婚して今度こそ幸せになってほしい。